心筋梗塞を発症した患者さんが持っていた危険因子と、健康診断を受診した健常者が持っていた危険因子を比較したところ、心筋梗塞を発症した患者さんでは、危険因子として、男性では善玉コレステロールが低いこと(低HDL-C血症)、高血圧、糖尿病、喫煙が、女性では高血圧、低HDL-C血症、糖尿病、高中性脂肪血症が重要であることが分かりました。一方、悪玉コレステロールが多い状態、すなわち高LDL-C血症は有意な違いとはなりませんでした。さらに、総コレステロール値が高い、高コレステロール血症は重要でないことが分かりました。
これは、総コレステロールや悪玉コレステロールが多い患者さんでは心筋梗塞を起こす確率はもちろんやや高くなりますが、コレステロールがそう高くない患者さんや、やや低めの患者さんも心筋梗塞を発症し、むしろ後2者の総数が多いことを意味します。また、コレステロールのなかで特に注意すべきなのは善玉コレステロール(HDL-C)が少ない状態(低HDL-C血症)であるということが分かっています。
低HDL-C血症(低善玉コレステロール)は中性脂肪が高い状態(高中性脂肪血症)で起こりやすく、この状態に高血圧症、糖尿病、さらに肥満(リンゴ型の中心性肥満)が加わると、「死の四重奏」と呼ばれ非常に冠動脈疾の様な心臓疾患が増える状態となります。この「死の四重奏」状態では、超悪玉の小粒子化LDLやレムナントという粒子が増えることが知られています。これにさらに高LDL-C血症(高悪玉コレステロール)が加わると、最悪の状態となるのです。従って、脂質については、総コレステロールではなく、その中身(質)が重要なのです。