2007年3月7日水曜日

心配なコレステロールについて

 コレステロールとは脂質(脂肪分)の一種で、動物の体内だけに存在し、植物の中には存在しない物質です。
 純粋な“コレステロール”は白くて硬い脂の塊で、“コレステロール”の“コレ”とはギリシャ語で胆汁という意味であり、“ステロ(固体)”という言葉と一緒にして“コレステロール”と呼ばれるようになったのです。
 “コレステロール”はどの動物にも含まれているということは、我々の身体にとってもなくてはならない物なのです。さらに、副腎皮質ホルモンや各種の性ホルモンの原料であり、また“脂質”の消化に必要な胆汁酸の原料になるなど、生命を保つうえで不可欠な物質なのです。そのために、ヒトの身体は、たとえ体外からコレステロールを摂取しなくても、“糖=炭水化物”からでも、“脂肪”からでも、体内で必要に応じて“コレステロール”を作る事が出来るようになっているのです。
 “コレステロール”は“脂質”の一種なので“水=血液”には溶けません。だから、折角“小腸”や“肝臓”で作られた“コレステロール”を身体の隅々まで輸送する為には、“脂質タンパク”という水に溶け易い形をとるのです。
 この“タンパク質”は“アポタンパク質”と呼ばれ、内側には“脂質”と結合しやすい部分があり、外側には“水”によく溶ける部分があって、このタンパクが“脂質”を包んで水溶性となります。
 “脂肪と結合したタンパク質=リポタンパク質”には、高比重(重い)リポ蛋白質(HDL)、低比重(軽い)リポ蛋白質(LDL)、超低比重(超軽い)リポ蛋白質(VLDL)などがあります。
 HDL蛋白は、肝臓や小腸で作られ、この作られた蛋白が各々の細胞まで行き、“酵素”の助けによって、“細胞”から余分な“コレステロール”を取り戻し“HDLコレステロール”となっつて、“肝臓”まで運ばれてゆき、“肝臓”で“受取人”に受け渡すのです。“肝臓”で受け取られた“コレステロール”は、“胆汁酸”となって小腸に分泌され“脂肪分”の消化を助け、残りの“脂質タンパク=アポ蛋白質”はアミノ酸にまで分解されます。
 LDL蛋白は、肝臓で作られた“コレステロール”を、身体の各所迄運んでいく役割を果たしています。
 言い換えれば、LDL-コレステロールは我々の生命活動を正常に維持していく為にはなくてはならない非常に大切な物で、むしろ“善玉”と言っても良いくらいの物なのです。
 食事より摂取したコレステロールの90%は胆汁中に酸性の物質となって排泄されます。コレステロールそのものは身体を作る重要な材料ですが、胆汁酸も当然大切なので、無駄にされない仕組みになっています。胆汁として一旦小腸に送られた胆汁酸は、再び小腸で脂質と共に吸収されて、腸と肝臓の肝をたえず循環しているのです。“小麦ふすま”の様な食物繊維に胆汁酸を吸着する事により、この腸肝循環を断ち切ってやればコレステロールを減少させる事が出来ます。
 昭和40年頃に行われた、秋田・大阪の一般住民を対象とする循環器疾患の実態調査によると、脳出血も脳梗塞もその死亡率および発生率は、ともに秋田のほうが高く、さらに高血圧あるいは高血圧性変化を有する人の割合も秋田の住民のほうが高いことがわかりました。しかし、血清総コレステロールに関しては、動物性食品の摂取不足を反映して、脳卒中の多発する秋田住民のほうが低値であるという結果が出ています。九州の漁村と農村の二地区の住民を調査した結果、高血圧の頻度は漁村の方が高いにもかかわらず、漁村の方が脳卒中が少ないと報告されています。
 米国が行った、広島県民、米国ハワイ・カリフォルニア在住の日系米人に対する調査によると、高血圧の頻度は、ハワイ・カリフォルニア在住の日系人に高く、広島県民は低いという結果が出ています。しかし、脳卒中の有病率および死亡率は広島県民が最も高く、ハワイ、カリフォルニアの順に低くなっています。同じ日本人の血を引く日系米人と広島県民でありながら、どうしてその様な差がでたのか、その理由の一つとして、広島県民は動物性食品の摂取量が少ないことが考えられます。
 一般的に、LDLは動脈硬化を起こすために存在しているのでも、悪玉として生まれてきているものでもありません。我々の身体を維持する為に、細胞の必須(必要不可欠)成分としてコレステロールや脂肪を細胞に運搬するという重要な役割を持っているのですから、これを取り除いたり、極端に下げたりすることはかえって危険なのです。もしその様なことをすれば、血管壁や細胞全体が低栄養となってもろくなり、脳卒中で倒れるということになりかねません。
 また、先にも述べたように、秋田と大阪では、秋田の方がコレステロールの値は低いですが、高血圧・脳卒中は秋田の方が多いのです。昭和30年から40年における動物性食品の一日当たりの摂取量を国民栄養調査の成績からみると、秋田は136グラム、大阪は173グラムとなっています。このうち昭和38年から40年について、魚類と肉類を分けてみると、秋田では魚が大部分であり、魚の摂取量では大阪を上回っていました。しかし、大阪は魚と肉の比が略二対一で、肉の割合が秋田に比べると比較的多いことが分かりました。即ち、秋田では動物性食品の摂取量が総量として大阪より少なく、そのうち魚が大部分を占めるため、肉、卵、乳類は極めて少ない食生活であったのです。